森で過ごす静かな時間~グランピングリゾート「星のや富士」<前編>
森の中で過ごす大人の休日──。
ここ数年、日本全国で次々と新しいグランピング施設がオープンしていますが、多くの人が「一度は宿泊してみたい」と憧れる“ 日本初のグランピングリゾート ”と言えばやはりここ。
2015年のオープンで場所は河口湖畔の山の中腹。
スコープのようなユニークな筒型のキャビン、そしてウッドデッキを何層にも重ねた「クラウドテラス」の写真は、雑誌などのグランピング特集でも頻繁に登場します。
12月中旬、そんな「星のや富士」で宿泊体験をしてきました。
冬でも、いやむしろ冬だからこその非日常体験をより濃厚に味わえる森の中の休日。写真もたくさん撮ってきましたので、その一部をご紹介します。
INDEX
- <アクセス>車なら河口湖ICから約20分/高速バス・鉄道でも
- <施設1>湖畔のレセプションから専用車で移動
- <施設2>河口湖が目の前に展開する広々テラス付キャビン
- <施設3>森の中で過ごす時間~冬の森に囲まれたクラウドテラス
- <過ごし方1>ホットドリンクに焚火~好きなスタイルでくつろぎの午後を
- <過ごし方2>森の中ならではの体験いろいろ~燻製づくり&薪割りにも挑戦!
- <過ごし方3>夜の森でコタツ三昧!無声映画にボードゲーム
- <ディナー>山梨ならではの狩猟肉(ジビエ)を堪能できるディナー
- <朝食>気分は湖畔ピクニック~テラスでいただく朝食
- <アクティビティ>富士山&周辺一帯が舞台!富士樹海ツアーに参加
<アクセス>車なら河口湖ICから約20分/高速バス・鉄道でも
場所は富士山の麓(ふもと)、河口湖畔から少しあがった山の中腹にあります。
東京からなら車で2時間半(河口湖ICから約20分)。
世界中から富士山目指して観光客がやってくる河口湖は、公共交通機関でも非常にアクセスのいい場所です。 東京・新宿バスタ(高速バスターミナル)からは京王バス・富士急行バスが多数の便を運行しており、特に朝9時台は毎十分毎に出発しているほど。高速バスに乗れば河口湖駅までは約1時間40分です。
河口湖駅で下りたら、レセプションまではタクシーで約18分です。
星のや富士は、河口湖をぐるっと半周した対岸にあるので、少し早めの到着なら「河口湖周遊バス(レッドライン)」で途中下車しながら観光施設巡りするのもおすすめです。天気がよければケーブルカーで登る展望台や遊覧船など、高台や湖上などから様々な角度の富士景色を楽しめるはず。
星のや富士のレセプションから徒歩6分ほどの場所には「河口湖自然生活館」があり、裾野まで美しい富士山を眺めながらの湖畔散策できます。
<施設1>湖畔のレセプションから専用車で移動
ちなみにGoogleマップで検索すると、地図上にはなぜか2か所の「星のや富士」が浮上します。河口湖畔からすぐの場所にあるのは「レセプション」。リゾート敷地からは少し離れた場所に独立して建てられています。
ここが星のや富士への“入り口”。
なぜレセプションだけ湖畔にあるのかしら。・・・と少々不思議な気持ちで向かってみると、そこには四角い建物。高い天井で3面がガラス張りになっていて、屋内とは思えない日差しが降り注ぎます。
山側の壁には色とりどりのリュックサックがとめられていました。 宿泊者貸し出し用の見本で、中には森の中の生活を楽しむための7つ道具が収められています。
- リュックサック(好きな色・形を選べる)
- 屋外用のマット&ピロー(クラウドテラスでのんびりお昼寝)
- ダウンブランケット(屋外でのひざ掛けなど)
- ヘッドライト(夜の敷地内移動に)
- 双眼鏡(森の中の野鳥観察など)
- 星のや富士オリジナルボトル(ロゴ付きでお洒落!)
- 森のビスコッティ(珈琲タイムのおやつ&お土産にも)
このうちボトルとビスコッティはお土産として持ち帰ることができます。さらに敷地マップも受け取り、期待感は一気にアップ! いざ森の中の世界へ!
荷物を預けたら、星のや富士のロゴが描かれた専用車で出発です。 ちなみに自家用車で来た場合も車はここの駐車場に置き、星のや富士の専用送迎車に乗り換えます。
急勾配かつ急カーブの道をぐいぐいと上った先に、総敷地面積約6ヘクタールの星のや富士がありました。
斜面に建てられた建物は、右側がフロントデスクとお土産品などを販売するSHOP、左側にはダイニング。木をふんだんに使った平屋の建物で、目の前に赤松の木立が広がっています。「リゾートにやってきた」感がじわり。ついさっきまで観光客で賑わう湖畔にいたのに、一瞬で別世界にトリップした気分です。
まずはフロントデスク前のソファで施設の説明やディナー案内などを受けます。
<施設その2>河口湖が目の前に展開する広々テラス付キャビン
フロントデスクの建物脇から階段を降り、山斜面に沿って作られた小道を降りてゆくと、開けた場所にキャビンが立ち並んでいます。敷地内ではもっとも低い場所にありますが、それでも標高は約830m。
まずはキャビンから見ていきましょう。
キャビンは、白い筒状の箱を二段に積み重ねたような不思議な構造。 この裏側が入り口になっていて、外の小道から各キャビンごとの専用階段とエントランスを通って室内に入れるようになっています。
キャビンに一歩入るとまず目が引き寄せられるのは窓。四角く切り取られた窓からの景色は、思わず瞬きを忘れフリーズしてしまう程。
目の前には遮るものもなく、キラキラと湖面を輝かせる河口湖とその奥に広がる美しい山の稜線。その大迫力たるや。ふらふらと窓に吸い寄せられていくと、広いテラスがありました。
このテラスリビングの開放感がまた半端ない!
外との仕切りは低い位置に設置されたカウンターテーブル状のもの。そのためテラス空間がそのまま外の空間とつながっている感覚です。高所恐怖症の人だとちょっとドキドキかも。ちなみに幼い子ども連れの家族が宿泊する場合には、テラスの縁のカウンター下に転落防止の柵をとりつけるそうです。
私が訪れた12月は、このテラスにコタツが設置されていました。 コタツではなく、代わりに薪ストーブが設置されたキャビンもあるそうです。
このコタツがもう、「入ったら出られなくなる」気持ちよさ!
夜はテラスリビングのコタツで富士山麓のジビエを味わえる冬季限定のスペシャル鍋料理をいただくこともできます。
【山麓の鹿しゃぶ鍋】
●星のや富士公式サイト「食事」
くさみが少ない冬の鹿肉を味わう”鹿しゃぶ鍋”。前菜・デザートを伴うコース仕立てで、ごゆっくりお楽しみいただけます。お部屋のテラスにご用意するコタツで温まりながら、野趣あふれる山の恵みをご堪能ください。
期間:2018年12月1日 – 2019年3月15日 時間:18:00 – 21:00
料金:大人10,000円/1名(税・サービス料10%別)*予約は2名より
内容:ドリンク、前菜、鍋、デザート
定員:1日6組(各定員3名)まで
滞在中のメインとなる居住空間はテラスリビングや屋外パブリックスペース。なので室内は、星のやとしては比較的シンプルな作りになっています。白を基調としたデザインで、この部屋はベッドが二台。山側にも窓があるので、夏は両方開け放てば気持ちのいい風が部屋を吹き抜けそうです。
窓際にはソファがあり、屋内からも河口湖の風景を楽しめます。 夜はかなり冷え込むだろうから、寒くなってきたら室内のソファでワインでも飲もうと思っていたのですが、結局テラスのコタツがあまりに快適すぎ、このソファでくつろいだのは朝目覚めた後のごく短時間だけ。 ここからの眺めももちろん最高です。
各キャビンにもいろいろなものが用意されています。ベッド脇に吊るされた布袋を開けると中にはBluetoothスピーカーが。自分のスマホと接続すれば、好きな音楽を楽しむことができます。充電式なのでテラスリビングに持ち出すことも。
バスルームもレイクビュー。
石鹸は河口湖畔のハーブ園で採取されたラベンダーなどを練り込んだオリジナル。 ヒノキのハーブバスも用意されていました。 バスタブに投入すると、一瞬でバスルームが森林空間に。ヒノキの清涼感たっぷりの香りは、内側からも浄化される気持ちを味わえます。
アウトドア好きな人ならちらり覗いてワクワクするこのコーナー。 焚火台を模した珈琲ドリッパーはスノーピーク製。壁面に吊るされたチタンマグもそうです。珈琲は星のや富士のオリジナルブレンド。
富士のミネラルウォーターが冷蔵庫の中に。 ビールはもちろんヤッホーブルーイングのよなよなエール。ワイン、ウイスキーなども用意されています。
そして夜。
テラスの縁に小さな焔がともされます。 ゆらゆらと深海生物のようにうごめく焔。背後に広がる河口湖や山の稜線の夜景の中にふんわり浮かび上がり、実に幻想的です。
今回の滞在で、改めて実感しました。
やっぱりコタツはいい!コタツラブ♪
<施設3>森の中で過ごす時間~クラウドテラス
キャビンも快適ですが、このグランピングリゾートで主たる時間を過ごすのはやはり「外」。五感で自然を感じられる森の中のパブリックスペースです。
キャビンからフロントデスクがある建物まで戻り、そこからさらに斜面の小道をあがっていきます。リゾート敷地内でこんなアップダウン移動を経験するのは人生初体験かも。
実は河口湖畔に到着した後、下からこのエリア一帯を見上げていたのですが、遠目に確認できたのは白いキャビン群のみ。「他の建物やクラウドテラスは一体どこにあるんだろう?」と首を傾げていました。
実際その入り口に立って納得です。高い赤松や杉の樹々に覆われ、完全に隠れていたのです。そもそも、敷地内の入り口からだって奥がどうなっているのか全く見えないのですから。一体この先にどんな空間が出現するのか、小道をのぼりながらワクワク。階段と小道を進むと、まず目に飛び込んできたのが広い「木漏れ日デッキ」。その風景に思わずびっくり仰天。
というのも・・・
森の中、木漏れ日が差し込むウッドデッキには並んでいたのは「コタツ」!
さっそくブーツを脱いでコタツに飛び込む私。
あまりの暖かさについ胸まで潜り込みたくなって、思い出しました。さっき貸出された屋外用の枕はこの時のためだったのか!と。
ごろんと寝転がると、視線の先には樹々の先端とその間に広がる真っ青な空。
葉を少し減らした樹々の先っぽは静かにゆったりと揺れ動き、その合間から冬ならではの濃い青空が見えます。自分自身が森に溶け込んでゆくような不思議な感覚。これまで冬のコタツの心地良さは十分に理解していたはずですが、ここのコタツの“二度と出ていきたくなくなる”危険度は格別かも。
その奥に作られた「空中ベンチ」はウッドデッキの縁・・・ではなく縁の外側に座面があるので座ると身体の下は空中に。座って背もたれに身を預けると他では味わえない浮遊感を味わえます。
冬以外の時期はもちろんコタツはありません。
新緑の時期にも来てみたくなりますね。
コタツの暖かさに未練を残しつつ、さらに上へとあがっていきます。
ここがクラウドテラス。 クラウドとは「雲」の意味。何層ものウッドデッキを重ね合わせ、空に浮かぶ雲をイメージしたゾーンです。
ひんやりとした、そして透き通るような心地よい空気で満ちた冬の森の中。
樹々の葉はかなり落ち、すらり天に向かって伸びた幹も引き締まってみえます。その合間から差し込む陽がウッドデッキをほんのり温めてくれます。
春から秋にかけては里山歩きをしたり渓流で遊ぶこともありますが、冬にこんな長時間、屋外で過ごす機会は今までなかったかもしれません。寒さの中にほっこりあたたかさを感じる。冬ならではの風景は、まるで一枚の絵のよう。
斜面に作られた空間は、どの場所に身を置くかで違う風景が楽しめます。
場所ごとに様々なチェアやリクライニングベッドなどが設置されているので、選ぶポジションによっても見える森の角度は全く別物になります。
クラウドテラス最上部のデッキには、ライブラリーカフェの建物。 夏は上の写真のようにオープンエアで、クラウドテラスと一体化した半屋外のスペースに。冬の時期は薪ストーブでぽかぽかと暖かい山小屋のような場所になります。
壁に設置された書架には、森や植物、富士山などに関する本がたくさん。また珈琲に紅茶、フルーツウォーターなども自由に楽しむことができます。
薪ストーブで別荘気分♪ コートを脱いでチェアに深く腰掛け暖かいハーブティーなどいただいていると、そのまま眠りに落ちてしまいそうです。
夜のクラウドテラスでは、煌々と燃え上がる大きな焚火のまわりにゲストが集ってきます。グランピングリゾートならではの雰囲気ゆえでしょうか。他の宿泊者の方々とも目があえば笑顔で挨拶し、焚火を囲んでいる時には「どちらから?」「今日ご到着なんですか?」から始まり旅話なども。
私が滞在していた時には、香港など海外から来られているご夫婦が多く、好天に恵まれて美しい姿を見せてくれた富士山について熱く語ってくれた方も。 パブリックスペースならではの楽しい交流のひとときがあります。